株で億り人、億トレーダーになった弟を持つ男の思いを書いています。

億り人
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小説本編 第11話~20話

第16話 新婚旅行と労働審判

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2012年は完全に株から撤退していたものの、2013年に入り、弟から勧められた株であっさりと50万円取ることが出来た。プライドなんかより金が大事だ。俺はプライドなんていらない。

この50万円は本当に生活を楽にしてくれた。

前回のお話はこちらです。

第15話 弟の覚醒なるか

妻の退職、塾の先々への不安とダブルでピンチを迎えてしまった。しかし思えば結婚以来ゆっくりなんてずっと出来なかった。父が小学生の頃、ピンチと思うな、チャンスと思えと言っていた。 このピンチもチャンスにし ...

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いざ!北の地へ!新婚旅行

年が明け、弟のおすすめ銘柄で50万円を稼いだことで少し金銭的には余裕が出来た。妻の雇用保険も無事にもらえることになったので、先行き不透明な生活ではなくなった。

労働審判に向け、弁護士の無料相談にも行った。

そこで数時間もお付き合いして話を聞いてもらった。

弁護士「旦那さん、法律家でいらっしゃいますか?」

そんな言葉が出るくらい俺は全部調べ尽くし、頭に全て叩き込んでいた。

妻側の意見、会社側の意見、そして多くの人をクビにしていた会社の過去などを含め、俺の見解と見通しを伝えたのだが、弁護士の先生も同じ予想だと言っていた。

ただ、さすがはプロ。

どうせやるのであれば、それに加えて残業代の未払いも請求しましょうということだった。

確かにタイムカードを押すプレッシャーを与えられたことでサービス残業をすることも多く、それが原因で夫婦喧嘩になることもあったので、その責任も取ってもらおうと思った。

弁護士の先生の意見として、行動を起こすのはしばらく後という話だったので、俺らはその時が来るのを待つことになった。

俺らは新婚旅行について話していた。

受験も終わり、今年は全員が第一志望校に合格することが出来た。

新3年生は1人しかいない。不安はもちろん大きい。

でもせっかく妻の仕事がなくなったのだ。

これはピンチなんかじゃない。行けなかった新婚旅行へ行く大チャンスじゃないか。

俺は高校の時、修学旅行が北海道という高校に行った・・・はずだった。

それが俺らの代だけなぜか九州にされてしまったのだ。

それもあって北海道への憧れをずっと持っていた。

妻も北海道に行ってみたいと思っていたようだ。

そのため、行き先は全く揉めることなく北海道にあっさり決まった。

恥ずかしい話だが、俺は飛行機が怖い。ものすごく怖い。苦手なんだ。

でも北海道へ行くなら飛行機は避けられない。それがちょっと嫌だった。

だから出来るだけ考えないようにした。

生徒が少ないこともピンチではなく、チャンスになった。

春休みにまとまった休みが取れたことで、4泊5日のスケジュールを立てることが出来た。

生徒数が多ければ恐らくこんな長い休みは取れなかっただろう。

どんなに悪いと思うようなことでも、考え方でチャンスに出来るのだと思った。

新婚旅行に出発する直前、弟からまたしてもおすすめ銘柄があると言われた。そこでその銘柄を100万円分購入してから北の地へ旅立った。願わくば旅行代が出ますようにと祈りながら。

羽田空港は大雨だった。

大気が不安定で、飛び立ってからしばらくはガタガタ揺れた。すごく揺れた。

怖かった。株で大損するのよりはるかにドキドキした。怖かった。何度でも言いたい。声を大にして言いたい。本当に怖かったのだ。こんなにも音がするのかと思ったくらいだ。

しかし北の地が近付くと空も晴れ、フライトも安定してくれた。

真っ白な大地が見えた。もう4月になるというのに雪が大量に残っていたのだ。

夢のような5日間だった。

旭川、富良野、札幌、小樽と渡り歩き、おいしいものをたくさん食べた。

普段飲まないし、飲めないお酒も飲んだ。

札幌のビール工場へ行った時だ。ジンギスカンを食べ、ビールも注文した。

しかし2杯飲んだあたりから様子がおかしくなり・・・トイレに駆け込むこととなってしまった。楽しすぎて自分が飲めないことを忘れていたのか、雰囲気に飲まれてしまった。

ただすぐに回復し、食べ終わってからも散歩する元気があった。

小樽ではおいしいお寿司を食べた。

俺はあまり生魚は得意ではないが、ここのお寿司は本当においしいと思えた。

今まで食べられなかったいくらも新鮮で食べることが出来た。

時々弟から勧められた株のチェックもしたが、特に大きな動きはなかった。

最終日前夜、新婚旅行が終わってしまう寂しさもあったが、飛行機にまた乗らなければならないと思うと憂鬱だった。それに帰ったら翌日からもう塾が再開される。

いつまでも北海道に留まりたかった。

ホテルで天気予報を見ると嵐が来ているとのこと。

飛行機が飛ぶかどうかも当日までわからないと書いてあった。

塾のことを考えたら、揺れてもいいからとにかく飛んでくれというように気持ちが変わった。

幸い嵐は逸れ、当日は穏やかなフライトで帰ることが出来た。

夢のような5日間を終え、日常に戻った。

「今度は子どもも連れてまた行きたいね」

夫婦揃って同じ意見だった。

そして新婚旅行から戻ったこの4月のうちに、俺は株式市場に電撃復帰することとなる。

そのきっかけとなったのはもちろん弟だ。

弟の快進撃を聞くと、いても立ってもいられなくなったのだ。

あれだけ固辞しいていたデイトレ復帰だが、こんなにもあっさり復帰することになるとは夢にも思わなかった。

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