好調だった3月相場の後は試練の4月となっていた。だがそんなことよりも弟の資産が気になるようになっていた。弟は奇跡の大復活をしているのだろうか。
それとも・・・。
前回のお話はこちらです。
第74話 大満足の3月と試練の4月
第2回のオフ会は4月下旬に決まった。募集をかけるとすぐにたくさんの申し込みがあった。いつの間にか多くの人にブログのことを、俺のことを知ってもらえていた。 正直なところ嬉しかった。オフ会までに頑張って利 ...
続きを見る
デイトレーダー同士の会話
俺はほとんど人と関わりを持たない。だが口下手というわけでもないし、人付き合いはむしろ好きな方だ。ただ時々面倒なことが起こるのも事実であり、それが嫌で避けている面がある。
そんな俺がオフ会を開いた、それも2回目だ。
駅に集合するも、弟だけ少し遅刻となった。先に皆で居酒屋に向かうも、歩いている間に弟も合流出来た。しかし歩いている間に数人はぐれてしまいちょっとパニックになった。
顔を合わせて間もないわけで、人通りも多い場所だったため、違うグループについていってしまったらしい。そんなこともあったが無事に予約していた居酒屋に到着だ。
株の勉強会という意味も兼ねていたり、その後アルバイトが入っている人もいたため、お酒は飲まない人が多い・・・と思ったが意外や意外、けっこうガンガンに皆酒を頼む。
俺自身すごく酒に弱いため、飲んだら勉強なんてとても出来ない。
もっと意外だったのは皆の酒の強さだ。
酒を飲んだことでハイテンションになることもなく、出会った時となんら変わらないテンションと口調だった。大人ってこんなに酒に強いんだなぁと感心してしまった。
いやまぁ俺も大人なわけだけど、人が酒を飲むところなんて父親と弟と妻と高校時代の友達の忘年会程度しか見ていない。みんな飲むと楽しそうになるし、時には絡んできたりもする。
それがオフ会参加者は終始シラフと変わらない感じだった。
だから株とは関係ないけど、率直にこれをすげぇと思ったんだ。
弟が仲介してくれた人は非常に豊富な知識の持ち主だった。彼もお酒を頼んでいたが、全く変わらないまま講義のように初心者トレーダーに話をしてくれていた。
弟も過去に3回億を掴んだ男としてけっこう知られていたため、どのようなトレードをしているのか色々と聞かれていた。俺と弟の席はかなり離れていたのだが、俺の耳は異常なまでに良い。
目も両目2.0あるのだが、耳も良いのだ。
「Dさん、今はどんな状況なんですか?」
この質問が飛んだ瞬間俺の耳はそっちに傾いた。俺も俺で他の人と話していたのだが、この部分だけは絶対に聞き逃さないよう集中した。俺も直接は聞きにくい面があるのだ。
だからこれを聞ければそれがベストと言える。
「800万ちょっとですね」
聞こえた。間違いなくそう聞こえた。
どこか安心したところはあるのだが、冷静に考えるとこれもまた異常だ。年末に破産まで追い込まれたはずが、たった4か月で800万以上残っているというのだ。
純粋に資金が20倍以上となっている。
あ、これもしかしてまた行くやつか?いやでもまだ800万。まだ?まだなのか?前回も2000万の時にまだと思ったものの、そこから数か月であっさりストレートに1億までいった。
うーん・・・考えたところでわからないわけだが、勢いはすごい感じる。
しかもどこかからけっこう損して800万という流れと言っていたようだった。
こんな漫画のような資産推移だから皆興味深く聞いていた。
俺の方はコツコツトレードゆえに地味ではあるが、妻子持ちで専業デイトレーダーを目指している人はむしろ俺の話を参考にしたいとたくさん質問をしてくれた。
株の話というのは普段する機会がない。普通の話をする知り合い、友達はいくらいても、株の話になどそう簡単にならない。だからこそトレーダーは株の話をすることに飢えている。
トレーダー同士だと遠慮なく株の話が出来て楽しい。
あわせれば4時間以上になるオフ会だったが、たった1時間くらいに感じるほどあっという間に過ぎてしまった。こんなにあっさり過ぎてしまうなんて思いもしなかった。
大儲けを狙いたい人、スイングトレードで資産を築きたい人、デイトレードでコツコツと稼いでいきたい人など様々な思いを持ったトレーダーが集まった会だった。
この第2回オフ会は青森~鹿児島というまさに日本縦断。とても有意義な時間だった。
2件目の居酒屋を出る時、最後にこのオフ会のきっかけとなった人からお言葉をもらった。
「Rさんの文章はすごく人をひきつける力があるのでもっとたくさん発信する場を持つべきです」
とても嬉しい言葉だった。
この時、高校時代の現代文の先生の言葉を思い出した。
「Rくん、君は文章を書く仕事をするといいよ」
現代文の先生に号令係を命じられ、自分としては普通にやったつもりだが、その丁寧さを褒めてもらえたことで嬉しくなり真面目に現代文に取り組んだ。そう、俺はちょろい学生だった。
現代文に真剣に取り組み、文章力をレベルアップさせていき、褒められることが嬉しかった。
いつの間にか文章を書く力はさらに上がっていたのかも知れない。
当時の俺は褒められたいだけだったのだが。
そして俺は当時の俺と同じだ。褒められたら調子に乗る。やる気になる。
このオフ会をきっかけに俺は新たな一歩を踏み出す構想を持つことになる。