夏期講習が始まり、とてもハードな毎日となったが、それでもきちんと毎日兼業トレーダーとしての生活をこなしていた。塾もデイトレも疎かにせず両立出来ていた。
思えばこの時は頑張り過ぎだったのかも知れない。
前回のお話はこちらです。
第27話 夏期講習とデイトレード
弟の収支はかなりおとなしくなり、相場も一時と比べればかなりおとなしくなった。 5月23日に大きな暴落があり、それ以降は少しずつだがおとなしくなっていったように感じた。そういう意味では俺や妻はこのバブル ...
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ハードスケジュールを乗り切る
8月に入ってもデイトレ、塾に一生懸命だった。
もちろん塾に遅刻など1回もしないし、デイトレという仕事に穴をあけることもなかった。
携帯ゲームだって当然頑張っていた。
実は8月の1日に含み損だけで80万という過去最大級の負けが見えた。結局大きな負けにはならなかったが、6月までのように楽々と稼げる相場ではなくなっていた。
デイトレは朝だけにして塾に行っていたわけだが、どうしてもロスカット出来ずに塾へ持ち込んでしまうことも何回かあった。そういう意味ではケジメがつけられていなかった。
取ったり取られたりの日々になり、刺激も薄れていくかに思えた。
しかしお盆休みになり、ここぞとばかりにトレードに没頭した。
すると収支もそれなりに激しく動き、再びやる気を取り戻した。
しかしこのやる気が続くのもそう長くはなかった。
お盆休みが終わればまた夏期講習が再開され、デイトレは朝の1時間のみとなった。
収支もまたおとなしくなり、刺激はまた薄れた。
いよいよ8月の夏期講習も終わり、ハードスケジュールも終わった。
本当に長く感じた。永遠かと思うように長かった。毎日終わるたびに残り日数を数えるくらい終わる日を待ち遠しく思っていた。しかし実際に終わってみるとどうだろうか。
心の中に大きな穴があいてしまったかのようにやる気が出てこないのだ。
夏期講習が終わるとともに俺は妻と旅行に行った。
そして旅行から帰ると季節外れの風邪で数日寝込んだ。
これにより、株からも少し離れてしまったのだ。
夏期講習、デイトレという2つのスケジュールから開放されてしまったため、身体はその『楽』さを覚えてしまった。デイトレ環境も稼ぎにくくなっていたのも休む口実にはおあつらえ向きだった。
俺は頑張った。すごい頑張ったんだ。
夏期講習つらかった。それでも毎日頑張った。1回も休んだり遅刻したりしていない。
デイトレも頑張った。1日も休まなかった。お盆休みはフルタイムでトレードした。
5月の復帰から4か月で400万以上も稼いだ。もう十分稼いだ。
いやぁ、本当によく頑張った。
なら、少しくらい休んでもいいんじゃないか。
俺のようなタイプは極端から極端に走る。中途半端が出来ないのだ。そういうタイプは立ち止まってはいけない。立ち止まった瞬間、再度走ることが難しくなってしまうからだ。
このタイミングで休みたいと思ったのは燃え尽き症候群によるものだろう。
しかし本当に休んでしまったことで俺はもぬけの殻のようになってしまった。
それにしても俺にとって弟の存在はあまりに大きいのだと知った。
デイトレに復帰しなければ金銭的に窮地に陥ったであろう俺を復帰に導いてくれたのも弟だった。
4000万も儲けたことで熱くさせてくれたのも弟だった。
億をつかんだことを素直にすごいと思えた相手も弟だった。
億から陥落したことで今度こそ張り合ってみようと思えた相手も弟だった。
追う間もなく再度億り人になってしまったのも弟で、次の瞬間また目の前に落ちてきたのも弟だ。
そんな弟が7月以降はあまりにおとなしい。
1日の勝ち額、負け額は激しくとも大きな変動のない7月。そして8月になると1日ごとの収支自体もどんどんおとなしくなっていった。相場の影響ももちろんあるのだろう。
おとなしくなっていく弟の収支を見て、再度億り人になる可能性の薄さを感じていた。
弟は今でも数千万の資産を別の口座に残している。
相変わらず株への熱も持っていた。
しかしそれでも以前のような勢いはもうないと思ったのだ。
弟が走らないのなら俺も走る必要ないか・・・とも思ってしまった。
あまりにも勝手な思い込みだが、これもまた休む口実に使いたいだけだった。
9月は風邪が治ってからもほとんど9時に起きることはなくなっていた。
妻と弟は相変わらずきちんと9時前に起きてスカイプでやり取りしつつトレードを頑張っている。
そう、頑張っているんだ。
弟の収支はおとなしくなったものの、俺のように怠けているわけではない。今出来る最善の策を取ろうと毎日頑張っての結果なのだ。
俺は毎日何をしている。
携帯ゲームだ。
朝は起きないし、起きたら携帯ゲームしかしない。お昼はカップ麺で済ます。
塾は平常授業に戻り17時からなので、16時過ぎまでは家にいる。それまでずっと携帯ゲームだ。
デイトレをする日もあったが、ほとんど携帯ゲームに時間を使っていた。
妻は最初何も言わなかった。
しかしそんな生活が1週間、2週間と続いていくうちに少しずつチクチクと言ってくるようになった。
よく考えれば当たり前だ。
でも俺は「4か月で400万稼いだんだからいいだろ」という言葉を盾に怠け続けた。
この携帯ゲーム廃人に向かっていく俺に新たな光りが、そして俺ら夫婦にとっては新たな火種がすぐそこまで迫っていた。