株で億り人、億トレーダーになった弟を持つ男の思いを書いています。

億り人
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小説本編 第51話~60話

第56話 兄を尻目に弟の大躍進

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俺は1~3月、完全に変わることが出来たと思った。4月は大被弾を喰らったわけだが、そこからプラスに転じる力もついてきていた。もう過去の自分とは違うんだと確信することが出来た。

しかしそんな時、弟の再飛躍を知ることとなる。

前回のお話はこちらです。

第55話 エイプリルフールのデイトレ大被弾

3か月で300万以上の利益が出せたことで完全に俺は調子に乗っていた。無理することなくこの勝ち額ベースに持っていけたこともあり、今後も同様に勝てるものと思い込んでいた。 まさかこの歳になっても過去と同じ ...

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弟の大勝利

俺のデイトレ人生では、見えない壁がいくつもあった。

始めてから1年間は月間プラスという壁があまりにも大きく立ちはだかった。この壁は厚かった。それでも俺はこの壁を1年かけてぶち破ることに成功した。

しかし思えばここから先の壁は一切壊せていなかったのではないか。

月に20~40万程度勝つ力はすぐに得られたものの、安定感はそこまでなかった。安定感の無さから自分に見切りをつけて退場を決意し、実際に退場していた期間もあった。

しかし2013年5月に復帰するといきなり月間利益が200万弱。翌月も同じくらい勝てた。

完全に月に20万、月に40万の壁を突破出来たと思った。

それでもその後また月に10万、20万が続くように戻ってしまっていた。

上を見たい気持ちを必死に抑え、上を見ていないフリをすることで自分を守った。

しかし今度こそ逃げ場がなくなっていた。

子ども生まれ、家が欲しいと言われた以上、今度こそこの壁を本当にぶっ壊すしかないんだ。そう思ってやってきた。4月の勝ちは4万くらいだが、1~3月で300万オーバーだ。

しかも相場がバブルになったわけではない。

2013年5月とは決定的に違った。今度こそ自分の力で切り開いたんだと思えた。

俺は弟のようには出来ない。だから1日2万ではなく、1日5万を目指す。それで全勝ならば100万、少しミスっても70万くらいは勝てるという目論見で2016年に入った。

4月を除けばここまでは見事なまでに自分の予定通りだった。

そんな中、実家に子どもを連れていった時、母から突然聞かれる。

 

母「最近のD知ってる?」

俺「え?知らない。何かあった?」

母「なんだかすごい儲かってるみたいよ。また同じにならなきゃいいけど。」

俺「え?すごいってどのくらい?」

母「わかんない。電話したらバーベキュー行く途中でタクシーにいるからって言ってた。だからあまり詳しく聞けなかったの」

 

やべぇ・・・やべぇぞ!

妻の声がフラッシュバックする。

妻(Dくんは1万円が1円だからね)

 

そう、その金銭感覚だ。

弟はそんな風に見えて金に執着は全くない。稼げば稼ぐほど使うようなタイプでもない。羽振りが良くなるというわけでもないんだ。弟は株をやるために金を稼いでいるに過ぎない。

金の使い道もあまりないから実家にあげたり猫の治療費を出したりしてくれていた。

自分のために使うのは株資金を増やすためだけ。

そんな弟がすごい儲かったという。「すごい」が気になる。しかもバーベキューにタクシー?そんなに財布の紐が緩むってこともかなり珍しいように思えた。

 

はっ!

 

そういえば弟は年末にブログを更新していた。もしかして・・・

そう思ってブログを覗いてみるとやはりあった!更新だ!

めちゃくちゃわかりにくいブログだったが、大体理解出来た。

どうやら1~3月はトータル3万負け。やはりこの3か月の相場が単純にやりやすかったわけではない。だからこそ俺は自分自身で壁を破れたのだと改めてここで確信することが出来た。

そして俺が苦戦した4月。ここで弟は3200万も勝ったようなのだ。

マジかよ!っという思いとともにどこかホッとしたような部分もあった。

弟がすごい儲かったというのなら、すでに億り人になっているのではないかと思っていた。

3200万勝ちということは年末の残高を考えても5000万程度のもの。

いや5000万「程度」ってなんだ・・・。とんでもない金額なのは間違いない。

しかし弟の「すごい」を想像した後だと5000万が少なく感じるから不思議だ。

俺自身、1日5万を目標とし、それに近い額が取れるようになれば弟がいくら勝とうが気にならなくなると思っていた。そして事実ここまで弟に成績を自分から聞くことはなかった。

しかしそれは気にしないようにしていただけなのだろう。

いつも心のどこかで気になっていたんだ。

なんて小さい男、なんて小さい人間なんだ。

俺は決してデイトレ、株ブロガーの成績を気にするタイプではない。一切気にならないと言っていい。しかし弟は近い人間だからどうしても気になってしまうんだ。

俺にとってはいつも小さい頃後からついてきていた可愛い弟。

いつも弟にとって模範の兄でありたい。良き人生の先輩でありたい。

おこがましいようだがそういう思いが常に心にある。

だからこそ弟に成功して欲しいというのも事実であるが、それと同時に俺以上の成功までいって欲しくないという思いが混在してしまう。とんでもなく難しい要求になってしまう。

ある程度稼ぐけど、俺より少し少ないくらいがちょうどいいと思っているのだ。

考えれば考えるほど情けない。

しかし俺はこれからもっと情けないと思わされるようになっていくのだ。

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