2017年になり、心機一転とも思ったが、ふたを開けてみれば何も変わらぬ日々だった。変わらないことは良いことでもあるとは思ったが、今のままでは目標の家はかなり遠い。
どこかで俺も弟のような勝負が出来る心が欲しいと強く思った。
前回のお話はこちらです。
第66話 弟はなぜ失敗した
弟の3回目の陥落を知った正月。昨年同様に正月は考える時間がある。世間で言う長期休みでもデイトレは休みがあまりない。そんな中で正月は貴重な長期休みなのだ。 否が応でも色んなことを考えてしまう。 前回のお ...
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3か月連続の安定と停滞
昨年11月、ついに復活して月間利益が50万を超えた。その流れで12月も50万を超えた。
そしてこの1月も安定感抜群だった。冬期講習があったことで前半はいつものように午前中だけで終わっていたし、利益もそこまで伸びてこなかったのだが、後半一気に伸ばすことが出来た。
57万勝ち。十分だった。十分過ぎる額に思えた。
生活していく分には十分だ。俺たちのような暮らしでは将来厚生年金がないから不安も多い。しかしデイトレーダーに定年などない。俺の手法にスピードなどさほど必要ない。
ということは加齢とともに勝てなくなるようなこともないと思っている。
そう、暮らしていく、そして子どもを養っていくという意味では十分なのだ。
しかし問題はそこじゃない。
妻「家が欲しいね」
この言葉が俺の心を拘束する。
俺は何度も自分を超えてきたと自負している。
過去に自分を鼓舞する時も使ってきたことだが、デイトレで勝てない時期を乗り越えた。
月に10万程度の利益しか出なかった頃を乗り越えた。
塾の収益が落ち込んだ時はそれを補う利益を上げることが出来た。
妻が退職し、専業主婦になったら2人分の稼ぎをデイトレで出せるようになった。
子どもが生まれてからは子どもを養っても余りあるくらい稼げるようになった。
でも・・・でも家は・・・家だけは・・・無理だよ。
今までのような10万20万の収益アップでどうにかなるものではない。月に80~100万くらいないと貯金などすごいペースで貯まるものではない。月に10万、20万貯金してどうなる。
俺が住宅ローンを組むことなどまず無理だろう。
現金一括で購入。子どもが小学校を卒業するくらいまでには買わないとこれまた意味はないだろう。まさか子どもが巣立ってから老後にマイホームなんて買ってもしょうがない。
そう考えると10年以内に3000万くらいの余裕資金が必要になる。
デイトレをするために2~300万と、予備資金として2~300万は最低限必要になるだろう。
最低でも500万確保した上で3000万程度の貯金。つまり3500万。
やっぱり無理だ。
50万を3か月連続突破ということで完全に復活を感じることが出来た。しかしこの収支で復活を喜んでいる以上、俺の今の限界はここにあるんだと痛感することにもなった。
そう、俺の限界はここなのだ。
弟の過去の億は地合いが味方した部分があると言ったが、俺が月間利益100万を超えた月も明らかに地合いが味方していた。俺の場合は地合いが急激に悪化することで収益が増える。
弟と得意とする相場は違うものの、やはり相場に味方されるかどうかの差は大きい。
そうは言っても相場と自分が完全にマッチングするなど1年に1月あるかないか、実際にはその頻度も難しい。考えれば考えるほど手詰まりに思えた。
この上なく順調に復活し、きちんとそれなりの額を稼いだ3か月。
自分なりに復活に手応えも感じていたし、満足もしていた。
しかしふと夜中に考え出すと負の感情が止まらない。さすが弟と正反対のネガティブモンスター。考え出したらどこまでも考える。色んなケースも想定して想像は膨らんでいく。
自分に都合の良い妄想でもしていればいいのだが、現実的なことしか考えられない。
どのルートで想像していっても簡単に行き止まりになる。それもすぐに。
本業とする塾で多くを望むことは出来ないだろう。
新聞織り込み広告だけに頼らず、自分の足でポスティング作業もしたし、塾の前にご自由にお持ち下さいのチラシも設置した。それでもなかなか反応はないし、あってもたかが知れてる範囲だろう。
やはりデイトレでの成績を上げるしか道はない。
そのためにはロットを上げるしかない。それだけでは足りない。
上がると思った時は長めに保有して利益を伸ばす必要もあるだろう。
しかしそれは諸刃の剣であり、生活費+アルファを安定して稼ぐ今の暮らしが奪われる危険もある。そうなったら毎朝吐き気がするプレッシャーでは済まないだろう。
本当にげーげーしてしまうような気がする。
ダメだったら戻せばいいという考えも何度か出てきたが、そんなに簡単なものではないと思った。
一度そっちに舵を切ってダメならまたコツコツなんて便利な切り替えスイットなどない。
もしかしたらデイトレで勝てない人間になってしまうかも知れない。
そんなリスクを背負ってまでロットを大きくする決断はなかなか出来ない。
なぜ俺はここまで一人で抱え込まねばならないんだ。眠れない夜はいつもこのことばかり考えていた。
うまくいけばうまくいくほど次を欲しがる。人間の欲は底なしだ。
妻はきっと何の気なしに言ったのだろう。
しかし俺にとって妻や子どもは自分以上に大事な存在。
そんな妻が家を欲しいと言うならばどんなに自分を犠牲にしてでも家を買いたい。
俺の人生において最大かつ最難関の目標が高くそびえ立っていた。