自分の中では大復活をしたと思っていた。それでもマイホーム購入への道を考えると復活どころかその糸口さえつかめないくらいの収益だった。悩む日々は自然と増えていった。
夫婦喧嘩の8割はお金絡みという格言に沿ってここに再び聖戦の火ぶたが切って落とされるのだった。
前回のお話はこちらです。
第67話 変わらぬ日々とデイトレ結果
2017年になり、心機一転とも思ったが、ふたを開けてみれば何も変わらぬ日々だった。変わらないことは良いことでもあるとは思ったが、今のままでは目標の家はかなり遠い。 どこかで俺も弟のような勝負が出来る心 ...
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聖戦は突然に
妻が株をやること自体に反対ではなかった。買値を俺に合わせることで利益にはなっていたからだ。少しずつでもプラスになってくれれば家計はもちろん助かっていく。
妻がデイトレをするにあたり、仕事と言ったり遊びと言ったりコロコロと立場を変えることは好ましくなかったし、喧嘩の種にもなっていたが、金だけを見れば確かに助かっていた。
2月に入りいきなり試練が訪れる。
初日から相場は荒れ模様。俺は得意とするところでもあり順調に2万以上利益を積み上げた。
しかし妻はかなりの金額負けてしまった。
俺と妻では買値がほとんど同じだ。しかし決定的な違いはロスカット。俺はロスカットをするが妻はロスカットをしないのだ。出来ないのではない。しないのだ。
だから取り返しがつかないような含み損になってからやっとロスカットとなる。
この日も同じ銘柄を同じような位置で買ったにも関わらず明暗くっきりだ。
特に今日のような荒れ相場、暴落相場ではロスカットをしないことで致命傷となるケースが多い。妻の機嫌が悪くなっているのはわかるが、俺の機嫌だってどんどん悪くなっていく。
俺が大負けしても喧嘩になどならないが、妻が負けた時に大喧嘩となるのは完全にパターン化されている。そして喧嘩の入り口も完全にパターン化されていたのだった。
俺が妻に反省を促し、妻は「今すぐは無理」と言う。俺は「今じゃなきゃ意味がない」と言い、そこから大きくなって仕事だ遊びだという掛け合いに発展していくのだ。
今回こそ同じ轍は踏まない。
俺「後からでもいいから今回はちゃんと反省しなよ」
妻「でも今日のはしょうがなくない?」
俺「しょうがなくないよ。俺が同じ銘柄を同じ価格で買って勝ってるんだから」
妻「まぁね」
俺「いつも後でって言いながら反省しないじゃん。だから繰り返すんだよ。後ででいいからちゃんと反省してくれ。さすがに頼むわ」
妻「じゃぁ今でいいよ。どうすれば良かったの」
俺「いや、マジで後で。後でいい。今やると喧嘩になるし俺の仕事に影響出る」
妻「いつもすぐって言うじゃん。何がいけなかったの」
俺「それをまず自分で考えるんだろ。デイトレはメンタルだっていつも言ってんじゃん。これじゃ俺に影響出るんだからマジで今はやめてくれ」
おかしい・・・。こんなはずではなかった。
こうなるくらいなら何も言わなきゃいいとも思うが、俺は妻の放った『マイホームの変』により日々苦しんでいる。妻と子どもが寝静まってからも一人で悩み苦しんでいることが多いんだ。
それだけにスルーは出来ない。
妻はいつも負けた直後は心がカッカするから反省など出来ないと言う。
俺はその状態で反省してこそ意味があると思っている。
しかし今回は妻の意見を酌んで後で反省すればいいと言ったんだ。
それなのになぜ・・・なぜ今なんだ。なぜ今日に限って今なんだ。
こいつ単純に俺の言うことに反発したいだけなんじゃないか。そうとしか思えなかった。これじゃ俺が何をどう気遣ったって結局は喧嘩になる。これじゃ絶対無理だ!
でもそれなら絶対引け後、せめて昼休みだ。今はまだ10時。稼ぎ時のはず。
心が乱れればデイトレも乱れ大負けに直結することはわかっている。今まで何度もそうやって心の乱れで負けてきた。今避けなければいけないのはその流れだ。
妻「考えたってわからない人もいるんだよ。皆が皆、君のようなわけではない」
俺「いいから後でだよ。後でいくらでも付き合う。仕事だっつってんだろ」
妻「私だって仕事だよ。仕事の反省をするんでしょ」
俺「クソが・・・」
・・・ポーン・・・・・・
俺のパソコンの右下で何かがポップアップした。これは証券会社の約定通知。
いつだ、いつ入れていたやつだ。
全く覚えていないほど頭がカッカしてる。これはまずいな。さっさと切って全部の買い指値を外してしまおう。よし、売るぞ。
・・・は?
見るとすでに12000円の含み損。くっそー・・・見誤ったか。
少し戻したところでロスカットを迷うもここでロスカットをスルー。このまま続けていくならばチャンス相場と思えるのだが、このトレードで終わりにして聖戦に本格参加となれば話は別だ。
せめてこのトレードを数千円負けで抑え、2万の利益は確保したかった。
しかしこれは完全に俺の都合。
そして相場はそういう隙を絶対に見逃してくれない。
程なくして右下に再度ポップアップ。そう、ナンピンが約定した合図だ。そしてそのナンピンが約定すると同時に株価は一気に崩れていった。
終わった・・・
せめて最初の12000円負けを受け入れていれば・・・。
いや、違う。
喧嘩なんて始まらなければ朝に入れたこの指値を消し忘れることなんてなかったんだ。
本当に喧嘩というやつは百害あって一利なしだ。
もう戻れない。含み損は一気に5万を超えた。もうどうにもならない。
ならばやろうじゃないか。聖戦に本格参加してやる。