弟との長い会話が終わった。塾では授業が疎かになってしまったこともあり、延長授業をすることでなんとか帳尻を合わせた。それにしてもこの会話でどうなることか。
果たして効果は表れるのだろうか。
前回のお話はこちらです。
第45話 最強のイナゴトレーダー爆誕!
授業そっちのけで弟との会話は続いた。いくらコツコツトレードの提案しても受け入れられることはなかったが、弟のためにも何かしたいと色んな提案を続けた。 そしてついに弟の心が動く時がきた。 前回のお話はこち ...
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兄弟チャットを夫婦で振り返る
塾から帰るといつものように妻が夕飯を用意してくれていた。
妻「喧嘩みたいになってたね(笑)」
俺「あぁ、もう言っても無駄だと思うところはいくら言っても平行線だわ」
妻「Dくんおとなしそうだけど根本的にはRと一緒なんだね」
俺「そりゃ兄弟だからな。二人ともこうと思ったら頑として動かないわ」
妻「彼女はどう思ってるんだろう」
俺「うーん・・・」
俺と弟との会話は妻に筒抜けだ。
なぜなら俺ら3人の共同チャットの中で兄弟の会話は行われていたからだ。
妻に見られて困るような話でもない。それにまさかあそこまで長時間になるとは思っていなかったし、ヒートアップするような事態も完全に想定外の出来事だった。
俺と弟は外見もあまり似ていないように思う。
手法だって超順張りと超逆張りで完全に真逆だ。
株をやる上での考え方もポジティブモンスターとネガティブモンスターで真逆だ。
だから似ているなんて考えは全くなかった。
でも妻に言われて確かに似ていると思った。
俺は小さい頃から怒りっぽく、弟はおっとりしている感じだった。最後の喧嘩の時だって俺に殴られ、蹴られ、数学のワーク破り捨てられ弟は泣くだけだった。
それが今日は俺に対して絶対に屈さず自分の意見を通してきたんだもんなぁ。
そう考えるとちょっと嬉しくも思えた。負け続けて土俵際にいることを考えたらもう少し素直に受け入れるべきところでもあるとは思うのだけれど。
妻が彼女のことを気にしていたのにも理由がある。
弟は2015年を勝負の年としていた。
1000万を超える利益、そして1000万の出金を達成することで結婚を考えていたのだ。
ここでも俺と弟は真逆なのだが、俺はどちらかと言えば保守的なタイプであり、弟は攻めるタイプ。
2015年の前半にお互いの目標を話す機会があったのだが、俺は毎月手取りで10万勝てればいいなと言っていた。年末年始は負けていたものの、そのくらいならば難しくないという思いもあった。
だから目標と言うよりは義務というレベルのものだった。
それに対し弟は年間1000万の出金を目標どころか義務にしていた。しかも賭けるものは専業トレーダーという職そのものだ。2015年に1000万出金出来なければ仕事を探して兼業トレーダーになると言うのだ。
しかも500万の出金が出来なければ引退して就職するとのこと。
これを公言出来るのだから器が違うと思ったものだ。
株で失敗するのもこのタイプだろうと思うのだが、株で普通では考えられないほどの大成功をするのもこのタイプなんだなぁと感じた。
妻もこの会話を知っていたからこそ、彼女のことを気にしていたのだ。
俺や妻がこの話を知っているということは、彼女も知っているに違いない。気付けば弟だってもうそんなに若いという歳ではなくなってきている。結婚するならもう頃合いだ。
途中までは順調だったはずだ。
弟は自分自身の性格を知っているから1000万の出金を義務としたのだろう。利益だけで1000万なら%で上下する株の世界だけにあっさり転落する危険も大きいと知っていたのだ。
それでも8月頃までの順調さで出金意識が全く持てていなかったのだ。
結局は自分で心配していた通りのレールに乗ってしまったのだ。
このままでは結婚など夢のまた夢。
いや、しかしこんな感じでは弟がこの先安定したデイトレーダーになるなんてことは100%考えられない。ならばここで引退して株から足を洗い、就職する方が結婚への近道なのではないか。
でも今はとてもじゃないけどそんな気持ちにはなれないだろう。
もう11月も中旬に差し掛かろうとしている。
所持金は40万少々。
1000万の出金というノルマは誰の目から見ても不可能だ。
俺は今までに何度も弟の奇跡を目の当たりにしてきた。
なんでそんな勝ち方が出来るの?っと何度も思った。
弟の収支報告ブログでは嘘だ!バーチャだ!とアンチコメントが付くこともあったが、わかる。とてもよくわかる。俺だって嘘だと思う。いくら計算してもどうしてそうなるのかわからないこともあった。
目の前でというわけではないが、毎日のように会話をし、どんな銘柄をどのように売買して勝ったのかを聞いてもにわかには信じられないような奇跡的な勝ち方だ。
ならば全く関係のない赤の他人からしたら絶対に信じられない話だし、嘘だ!っと言いたくなる気持ちはよくわかる。
でもそれが事実。弟は奇跡を起こせるタイプの人間だ。
しかし今回ばかりはさすがに分が悪い。
今年で引退どころか、年内の生活費さえ出せるのかわからない状況だ。
当然だが俺は金銭的に支援出来る余裕もない。
俺は俺の出来ることをした。
落ち込んだ弟の精神面を復活させた。
弟の言葉から、弟がすべきことを導き出した。
弟自身が納得出来るやり方を提案出来た。
あとは弟自身が結果を出すだけだ。
最後のあの感じでは無理だろうけど・・・。