ドラマで言えば大団円といった感じで2015年を締めくくった弟だが、俺はそうもいかない。焦燥感から大失態で大損もした。その上、今度どうすべきか悩んでしまうようになった。
そしてそこにさらなる追い撃ちが・・・。
前回のお話はこちらです。
第49話 置き去り
自分の気持ちと向き合い、なぜ弟が大勝ちすると焦るのかがよくわかった。しかしわかったからと言って焦らなくなるわけではない。自分自身ではどうすることも出来なかった。 そして今日も弟の言葉で焦りを感じるのだ ...
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比べられる苦痛
2015年、大晦日に友人が子どもを連れて近くまで遊びに来た。俺の子よりも1つ上だ。
一緒に公園で遊んだ。自分の子と友人の子で遊ぶなんて想像も出来なかった事だから、とても感慨深かった。俺はこういうささやかな幸せを大事にしていくだけでいいと本当は思っていたんだ。
だから弟がいくら稼ごうとも、関係ないはずなんだ。
でも・・・でもやっぱり俺のコツコツトレードに費やした時間全てが否定されたような気持ちがどうしても抜けなかった。まるで呪われた剣のように心に突き刺さったままだ。
やはりこの剣を抜いてくれるのは妻しかいないだろう。
公園の帰り道、重い口を開いた。
俺「俺みたいにコツコツやって貯金1000万になるのと、Dみたいに破産寸前まで何度いこうとも最終的に2000万以上の貯金になるのってどっちがいい?」
妻と以前話したことがある。
男は夢見がちで女は現実主義だと。だからコツコツやる方がいいという話も聞いていた。だからこそ俺はこんな風に聞いたのかも知れない。しかしここで予想外の言葉が返ってくる。
妻「Dくんの方は最終的に2000万以上になるの?だったらそっちの方がいい」
俺「え?でも途中で破産寸前までいって贅沢も出来なくなる可能性あるんだよ?」
妻「うん、でも最終的に2000万以上になるならそっちの方がいい」
俺「だって女は現実主義だから安定の方がいいって言ったじゃん」
妻「最終的に2000万になるならって言うからそっちの方がいいってだけ」
まぁ俺の聞き方が悪かったのもあるだろう。確かに最終的に成功するとわかっている話ならばそっちの方がいいに決まってる。ただそれでも妻には夫を肯定して欲しかったけどね。
自分で自問自答し続けててもどんどん惨めになっていくだけだった。
だから妻に救い出して欲しかったんだ。
言わば女性脳のような考え方で妻に質問したわけだが、妻に共感してもらうことは出来なかった。
それどころかこれがきっかけで呪いの剣をさらに深く刺されることになる。
妻「家が欲しいね」
俺「え?マイホーム?」
妻「うん、2000万あれば頭金もあるし買えるもん。いいなぁDくん」
確かに妻は2013年に株を始める時、キャッシュでマイホームを買うのが目標とブログに書いていた。でもそれは掴みの言葉というか、ちょっとしたギャグのようなものだと思っていた。
それに家が欲しいだなんて全く知らなかった。
そもそも俺は数日前、ずっと今のマンションに住むなら毎年100万くらいは貯金が増やせるかも知れないと考え、自分を慰めたばかりだ。
引っ越すことさえ頭になかったわけだから、マイホーム購入なんて欠片ほども考えていなかった。
俺「なんで突然マイホーム?今の家でいいじゃん、俺好きだよ」
妻「だって狭いじゃん」
俺「いや狭くないでしょ。使ってない部屋だってあるわけだし」
妻「でも子どもが大きくなったら部屋欲しがるよ。収納もないし」
俺「収納は確かにないけど、子どもも1人なら部屋あげられるじゃん」
妻「まぁねぇ・・・」
1人暮らし用のアパートからこのマンションに引っ越した理由も『狭いから』だった。
そこで将来も考え、3DKという広い間取りを選んでいた。
4.5畳という狭い部屋は使われることなく物置きのようになっている。
ダイニングキッチンも料理以外ではほとんど使っていないスペースだ。ここでごはんを食べるようにすれば今使っている部屋が空く計算にもなるし、まだまだ余裕があると思った。
少なくとも俺は今のマンションを狭いと思ったことは1度もなかった。
それだけに『狭い』という理由には驚かされた。
いや、でもこの際理由なんてどうでもいい。
妻が家を、マイホームを欲しがっているのだ。
マイホームを買わないにしても、今のマンションに住み続けることはないということだ。
俺は共働きじゃなくなったタイミングで稼がなければいけない金額は2倍以上になった。塾を頑張るだけじゃなく、デイトレに復帰することでなんとかそれを実現させた。
子どもが生まれたことでさらに稼がなければならなくなった。
一時デイトレのやる気がなくなっていたものの、稼がなければならないなら・・・と、デイトレに本気で取り組むことでさらなる収益増を実現させた。
思い返すとよくやっているのではないかとも思えた。
普通そう簡単に月収、年収を上げることなんて出来ないはずだ。俺はデイトレーダーという立場ゆえに自分の給料は自分の行動で全て決まる。デイトレーダーゆえに欲しい時、必要な時に収入増を即座に実現させることが出来たのだ。
それでもコツコツに限界を感じていた時だ。
弟にあっさり資産を抜かれた直後だ。
思い悩んでいた時だ。
「コツコツでいいんだよ」「十分よくやってくれてるよ」「今のままが1番だよ」
自分だけの気持ちでは限界だったから・・・。自分のやってきたことの意味が消えてしまいそうなのが怖かったから・・・。だからこそ、そんな優しい言葉が欲しくて口を開いたはずだった。
それなのに結果としてより大きな心の負担、金銭的負担になってしまった。
俺は来年どうすればいいんだろうか・・・。