2012年末からスタートしたバブル相場はアベノミクスと呼ばれる。日経平均株価の上昇もすごかったが、何より個人投資家の好きな新興市場の上昇率はものすごいことになっていた。
俺がデイトレ復帰した翌週、ついにその恩恵を受ける。
前回のお話はこちらです。
第17話 弟が億り人!?デイトレ電撃復帰!
楽しい新婚旅行を終え、日常に戻っていった。塾の生徒は2人増えたことで赤字になる可能性は低くなったが、依然として経営が苦しい状況だった。 弟の株成績も2月以降は目立ったものではなかったはずだ。 しかし新 ...
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限りなく億に近付いた弟
ついにデイトレ復帰を果たしたものの、イマイチ大きな勝ちもなく、悶々としていた。弟は変わらずハイペースで勝っている様子だっただけに、俺がうまく乗れていないのだろう。
もう少し良い意味でバカになる必要があると思った。
リスクばかり考え、勝負に出られないのだ。
何もハイリスクハイリターンで全財産ぶち込むような取引をしようってわけじゃない。ほんの少し勇気を出して上がっている株を買えばいいだけなのだ。
なのに今までの経験がそれを許さなかった。
俺はデイトレードを仕事とする人たちのように生活費が捻出出来るほど勝ってきたわけではない。しかし200万前後の利益は出し続けてきたわけだ。
朝の30分、1時間をメインとした取引でも勝ってきた。
その頃はずっと下落相場だったのだ。
その下落相場で培った経験と、積み重ねてきたロジックが邪魔だった。
過去の相場と今の相場は全く別のものだということを受け入れられなかったのだ。
週末にじっくり考えることで、1つの答えを出した。
大きな金額(ロット)で買う必要はない。ロットを落として勝負してみよう。
それで慣れたらロットを上げればいいのだから。
とにかくチャンスを増やしたかった。弟が買うような銘柄を瞬時の判断で買う勇気が欲しかった。弟はさらにブッコミといって自分の資産以上のロットで買うこともあった。
さすがに家庭持ちの俺はそこまでのリスクを取れない。
だが同じような銘柄を買うところまでは出来るはずだ。
それが出来ないのは慎重ではなく臆病。
塾がうまくいっていない以上、他で稼ぐしかない。そしてそのチャンスは目の前にあるのだ。後はそこに少しの勇気が加わればきっと良い結果になるのだと強く言い聞かせた。
週明け、人が変わったかのように動くことが出来た。
週末のうちに色々とシミュレーションをしておいたのだ。
それまでは買うべきと思った瞬間、『今までの俺ならば・・・』という考えが過った。
その度に躊躇してしまっていたのだ。
株、特にデイトレードというのは判断力、決断力がとても大事になる。チャンスと思っても、その数秒後にはチャンスでなくなってしまっていることも少なくない。
だからこそ一瞬の躊躇で成績は大きく変わってくる。
この日はまだ暴れ馬に乗っているようで、なかなか慣れなかった。
チャンスで入れるケースは格段に増えたものの、ロスカットへの躊躇は変わらずで利益を伸ばすことが出来なかったのだ。しかし確実に変われていると感じた。
俺もまだまだうまくなれる。そう思った。
引け後、弟と少し話していると・・・
D「あと少しで億だったわ」
俺「億!?もう!??」
4月末には4000万くらいだったはず。
弟もブログをつけていて収支が書いてあったので、順調に勝っていることは俺も知っていた。
でも・・・億?
聞けばこの日だけで2000万円以上も勝ったらしい。
俺は15000円だ。
何・・・これ。
出来るだけ考えないようにはしている。俺は俺、弟は弟だ。
同じことは出来ない。
ただそれでも考えてしまう部分がある。
弟は昨年の11月、資産が40万しかなかった男だ。俺はその時に600万以上持っていた。
それがたった半年後、どうなっている。
俺は変わらず600万持っている。40万しか持っていなかった弟は1億円間近だというのだ。
漫画か?これは漫画なのか?全く想像が出来なかった。
弟や弟子が大きく勝っているからと再入場した株式市場。確かに勝ちやすい雰囲気はわかる。以前と比べればミスをしても許されるケースが多く、難易度はずいぶん下がっていた。
ただ、どんなに簡単になっても40万円の資金から1億円にするイメージは全く持てなかった。
実際俺も500万円の資金でトレードをしていたのだが、資金が2倍になるイメージさえなかった。
一体どうやっているんだろうかと興味を持って聞いたこともあったのだが、やはり信用枠を使っての取引と、持ち越しによる利益が大きいということだ。
持ち越しはまだしも、信用枠を使って自己資金の2倍も3倍も買うことは俺には出来ない。
でも、まだ腑に落ちない点がある。
40万から1億円なら250倍だ。
自己資金内で頑張っても10倍、20倍くらいなら可能性は十分にあったはず。
それさえイメージ出来ないのはやはり器の問題なのだろうと思うと落ち込んだ。
受け入れろ、受け入れるんだ。
自分の弱さをまず受け入れる。それから対策を考えればいい。
デイトレで勝てない時期、俺はそうやって変われたのだから。
自分の弱さを受け入れるのと同時に弟の快進撃、時代にマッチしたトレード手法を認める必要もあると思った。
どこかで弟は俺の後ろをついてくるものだと思っていたところがあった。
プライドを捨てたつもりでも、どこかで残っていたのだろう。
自分より出来る人を認め、出来ない自分を受け入れる。
簡単なようでとても難しいことだ。でもそれが出来た時、成長することが出来るはずだ。