弟にアドバイスは送るものの、そのほとんどが自然と却下されてしまう状況だった。弟に悪気があるわけでもなく、単純に俺の提案が弟の満足を得られなかっただけだ。
俺はなんとしてでも弟を復活させたかった。
前回のお話はこちらです。
第43話 デイトレーダー兄弟の会話
ポジティブモンスターからネガティブモンスターに変わった弟だったが、まだ不完全なネガティブモンスターだった。兄弟の会話の中でも、時に自信が垣間見えるところがあった。 この先、弟はどんなトレーダーになって ...
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女性脳の共感か男性脳の解決策か
どうしてもわからなかった。弟になんて言えば正解なのか。
これはあまりに難問だ。
単純に勇気付ける、元気付けるのが正解ではない。実力も伴わないままポジティブモンスターに戻してしまったらあっさりと退場になってしまうだろう。
だからと言って打開策を言うにしても俺は俺のやり方でここまで勝ってきた。
だから結局は逆張り派、コツコツ派がやるような練習方法しか提案出来ないのだ。
手詰まりにも思えた。
D「安心して。働くことになっても対戦してるブラウザゲームは続けるから」
こんなしんみりしたことも言うのに俺の提案は全却下なんだ。難し過ぎる!
男性脳、女性脳という話は聞いたことあるが、男性は悩みに対して解決を求める。それに対して女性は共感を求めるケースが多い。だから解決策なんていらないんだというもの。
女性「負け続きなの。私ってダメね。」
男性「大丈夫、勝つためにはね・・・」
これじゃダメらしい。
女性「負け続きなの。私ってダメね。」
男性「うんうん、わかるよ。自信なくすよね。うまくいかない時って落ち込むよ」
これが正解とのこと。
これか?今の弟に対してもこれが正解になるのか?いや違うだろ。
共感してどうする!打開策を見つけなくてどうする!
デイトレを、株を始めたばかりの人を相手にしているわけじゃないんだ。
もう何年も負け続け、その後で億り人というカリスマトレーダー的存在にまで成り上がり、その上で陥落して今まさに破産してしまいそうになって困っている。
この相手に共感して終わってちゃダメだろ。意味ないだろ。
それにどうやって共感すりゃいいんだ。
俺は何千万も負けてないどころかそんな大金持ったこともないぞ。
億り人なんて夢見ることさえ出来ないくらい遠い存在だぞ。
ハッキリ言って共感したって薄っぺら過ぎる。
そもそも弟は男だ。共感より解決策なんだ。
でもここまでのことを考えるとコツコツトレーダーに転身する気は一切なさそうだなぁ。仮にそうなってもすぐに元に戻るって自分で言ってるし、何か違う方法が必要だ。
俺は弟の過去のブログを読み返し、打開策を練った。
俺「出金を徹底してみたらどう?」
D「どんな風に?」
俺「例えば勝ったらすぐに半分を出金していく。負けても入金はしない。」
D「なるほど、それはいいかもね」
受け入れられた。
俺「Dは1億を40万にしてしまう人間だけど、40万を1億に出来る人間なんだぜ。だから半分ずつ出していっても大丈夫なはずだし、出金することによって強制的にリスク回避になるよ」
D「そうだよね」
俺「本当はコツコツやって欲しいんだよね。コツコツトレードをマスターしつつ、いつかまた2013年のようなチャンスが来れば大味トレードをすればいい。退場になっちゃったらいつか来るはずの大チャンスに参加さえ出来ないんだから」
D「まぁね。でも勝ち額を制限するのはなぁ・・・」
俺「制限しなくても自然でいいよ。とにかく出金さえ出来れば問題ないでしょ。ただいつも出金した後に再入金してるから、それだけは絶対ダメね。」
D「どうしてもやっちゃうんだよ再入金(笑)」
怪しい・・・怪し過ぎる。これだと出金案は受け入れられたものの実行されるかどうかわからない。それに実行されても再入金することを躊躇しなそうだ。
資金管理だけじゃダメだ。もっと他の何かが必要だ。
俺のように副業、もしくは主たる職を持ち、デイトレを副業にする手も提案した。
しかし株に使う時間が大きく減ればさらに勝つのは難しくなるだろうと却下された。
そこで弟に時間の使い方を聞いてみた。
俺「いつも15時以降どういう生活してんの?」
D「少し休んでからトレード記録つけたり復習して、翌日のためにチャートみたりして監視銘柄の入れ替えとか材料確認したりしてるね」
俺「それどのくらい時間かけてんの?」
D「数時間は毎日使ってる」
俺「俺なんて15時になったら株のこと一切考えないし、朝もギリギリまで考えてないよ。予習で思い込むよりももっと自然な流れに沿う練習をしてみたらいいと思うな。」
弟はとにかく努力家だ。
時間外に一切株のことを勉強しない俺に対し、弟は本を何十冊も読破している。
可能性を感じれば無料メルマガも登録し、さらには有料会員にもなる。
そうやって株で勝つためには時間も努力も金も何も惜しまないタイプだ。
そう考えると弟が億り人になったことは当然のようにも思えた。
しかしそれだけ努力する弟でも破産に追い込まれるのだから、株の世界は厳しいと再認識もした。
今、こうして勝てていないのなら、弟の今やっている努力は無駄な努力、間違った努力なのだ。
その努力の方向性を変えるところから始めるのが一番だと俺は思った。
別に兼業になることだけが正解じゃない。今まで使っていた時間を違う努力の時間にするのだ。
この提案はポジティブモンスター復活の契機となった。