兄を尻目にあっさりと3度目の億を達成した弟だが、今回もまたあっさりと陥落することになる。さすがに3回目となれば半分出金するなどの対処法はいくらでもあったはずだ。
しかし今回も抵抗なく陥落。すごいのかダメなのかわからない弟だ。
前回のお話はこちらです。
第57話 億り人は突然に
3月までは行ったり来たりするものの結果的におとなしい収支だった弟だが、4月は大躍進となった。5000万ものデイトレ資金を手にしたいたのだ。俺は完全に忘れていた。 過去2回、弟がどのようにして億り人とな ...
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滑り落ちるか踏み止まるか
弟は億達成の翌日からまた負けた。負けに負けた。
数日間ストレートで負け、4000万近いマイナスを計上していた。
俺も5月中旬に大きな負けをやらかした。
当時、自動運転関連のテーマはすでに注目度が落ちていて、デジタル教科書関連が賑わっていたのだが、俺は相変わらず自動運転関連に固執してしまっていた。
朝から大きな負けを計上し、取り返せる感じがまるでなかった。
大きな含み損になったり思うようにいかなくなるとよくテーブルやパソコンを思い切りぶん殴っていたのだが、パソコンは本当に壊れそうだし、テーブルを叩くと子どもがびっくりするからやらないようにしていた。
しかし今日だけは無理だ・・・。
そう考えた俺は冷蔵庫の前に立った。
自分に出来る精いっぱいの正拳突きを冷蔵庫に一撃喰らわせた。
うんともすんとも言わない冷蔵庫に腹を立て、もう2~3発追撃をした。
冷蔵庫が凹んだことを確認し、気が済んだ俺はパソコンの前に戻った。しかしさらなる暴落が俺の含み損を膨らます。もう限界・・・限界だ。大声をあげてキレてしまった。
すると妻もキレる。「八つ当たりしないでくれる!??」
当然だ・・・当然。
「ごめん・・・」
俺はしょんぼりしながら家を出た。
マンションの階段を駆け下りながら壁に一撃軽い蹴りを入れたらマンションの壁も破壊されてしまった。やべぇ・・・。もうなんなんだよ!下まで降りてからコンクリートの塀を蹴った。
何度も何度も蹴った。そしてコンクリートも破壊された。
いや嘘。
どうあっても壊れないようなものをわざわざ選んだ。つまり冷静さはあるんだ。
絶対に壊れないと思うものを選び、力の限り蹴り続けた。どう考えても周りから見れば危ない人、ヤバイ人。だから周りに人がいないことも確認した上で蹴り続けていた。
何度も蹴ってから少し携帯で株価を確認すると、ストップ安に張り付いたはずの株価が猛烈に戻している!
40万オーバーだった含み損が20万を切っているではないか。
俺は走った!走ってすぐに家に戻った。
そしてすぐにロスカットをすると、10万ちょっとのマイナスで済んだ。良かった・・・本当に良かった。
この後、攻めた結果で18万ちょっとのマイナスになってしまったのだが、これは仕方ない。それよりも40万負けでストップ安に張り付くような結果にならず本当に良かったと思った。
しかし残る問題はマンションの公共部分の壁を破壊してしまったことだ。
これの弁償はおいくらなんでしょ?
場が終わった後に不動産に行き、正直に打ち明けた。蹴ってしまったのは事実だが、絶対に力いっぱい蹴ったわけではないという苦しい言い訳をしつつ壁を見てもらった。
するとなんとその言い訳が通用したのだ。
どうやら見てわかるそうで、石膏ボードというのは大きな力が加わった時と、一点に軽い衝撃があった時で壊れ方がまるで違うそうだ。これは一点に軽い衝撃があった壊れ方だと言われた。
思えばつま先でコツンとやったような気もする。
元々古かったこともあり、今回は負担なしで直してくれるとのこと。本当に大感謝だ。
5月も18日が過ぎたのに、ここで今月もまた借金生活だ。
しかし5月もきちんと巻き返しが出来た。終わってみれば約33万の利益でフィニッシュ。
なんとか踏み止まった格好だ。
そして踏み止まったのがもう1人。
そう、弟だ。
1億の後で4000万も負ければ今までなら完全に破産コース。
それが今回は月末にかけて大型連勝を決めたのだ。金額的にもかなり巻き戻すことが出来ていた。
資産的にはおよそ7000万くらいは残っているんじゃないだろうか。
4000万、5000万からほんの数日、まさに一足飛びで億を達成出来る弟からすればこの7000万でしばらく安定出来ればこの先の未来が明るいことは間違いないと俺は思った。
俺は1月から変わろうとし、確かに変わった。
その希望が4月、5月と砕かれそうになりつつもなんとか踏み止まった。
そして弟は昨年11月、確かに変わった。
そして1~3月は伸び悩んだものの4月に再度大きな波を掴むことに成功した。その成功の波はさらなる成長をし、5月の数日で億り人まで上り詰めたのだ。そしていつも通りの陥落だ。
そのままズルズルと落ちていくだけだった過去。
それが今回はきちんと歯止めを効かせ、2000万も取り返すことに成功したのだ。
まさに踏み止まったと言えよう。
兄弟で好調期はまるで違った。むしろ兄が好調ならば弟は不調。兄が不調になると弟は好調という不思議な巡り合わせだった。それでも5月中旬に大きなピンチを迎えたことは同じだ。
そしてそこで2人とも踏み止まったのだ。
今度こそ俺ら2人に明るい未来があると思いたかった。
しかしこの時忘れていた。俺の弟に常識など通用しないということを。