いよいよ労働審判が始まる。緊張している妻にワクワクする俺。弁護士はやることはやってくれていると思うがどこか頼りない雰囲気もある。俺が全力サポートするしかない。
俺が妻を救い、ブラック企業に打撃を与えてやるのだ。
前回のお話はこちらです。
第30話 ブラック企業に裁きを!いざ労働審判へ
デイトレ熱を失い、ダラダラとした生活を送っていた俺。携帯ゲームとブラウザゲームに熱中する日々だったが、妻の労働審判に向けてもやることはやっていた。 俺にとってはもう1つのゲームというつもりで取り組んで ...
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労働審判始まる
労働審判では、地方裁判所に赴き、労働審判官、労働審判員のもと、相手会社や相手方弁護士などと話し合う・・・というか言い合うというか、まぁ対決することになる。
事前にこちらの言い分を送り、その反論をもらう。
その反論に対してこちらがもう1回送ることが出来、あとは直接対決だ。
こちらの言い分を送った後の会社側の反論は俺の計画通りだった。あえて反論しやすい部分を残しておいたのだが、まんまと俺の手のひらで踊るように狙い通りの反論がきた。
俺らはそれに対する反論を証拠付きで持っていたのだ。
あぁ、この感覚・・・まさに携帯ゲームの指揮と似ている。
ガチンコでぶつかっても勝てるであろう案件でも、あえて弱点と思わせ、そこを攻めさせることで相手をさらに窮地に追いやる戦い方は快感以外の何ものでもない。
性格が悪いなとも思うが、会社が俺の妻にした仕打ちを考えれば当然の報いだ。
再反論を弁護士は直接対決当日に送った。
言い逃れの出来ない証拠を直接対決でドッキリのように見せ、動揺を誘う意味もあるそうだ。この弁護士も穏やかそうに見えてけっこう性格が悪いんだなと思うと嬉しくなった。
味方ならば性格が悪ければ悪いほど頼もしいのだから。
第1回労働審判では、相手弁護士から容赦ない言葉も飛び出たそうだ。仕事が出来ない、クビで当然といった内容もあったらしい。しかし苦しい苦しい。
今までに雇った人が全員ほぼ1年以内に消えていっている会社で4年も残っていた妻が仕事が出来ないなんて通らないだろう。そんなに出来ないなら、クビで当然ならもっと早く切られているはずだ。
そもそもアルバイトから入り、半年後に契約社員、さらに4か月後に正社員となった。
同期で入ったアルバイトは全員クビだし、契約社員もみんな契約打ち切りとなっていた。
そう、そこで言わば仕事が出来ないと判断された人は切られているのだ。
このような事実を隠せるとでも思っていたのだろうか。
この事実だけでも十分に会社側の意見は論破出来るわけだ。
上司が辞めた理由についてもこちらは完全に準備が出来ているわけで、会社側は口を開けば全てこちらの証拠で潰される。それを何回か繰り返すことで会社はどんどん不利になるのだ。
いくらこちらが不利になりそうなことを言っても全て証拠付きで跳ね返されるのだから、労働審判官、労働審判員の心象はどんどん悪くなり、こちらに心が傾いてくる。
これも完全に狙い通りだ。
あえて泳がし、それを潰すことで会社側が『嘘つき』であるという心象を与えられたのだ。
第1回の労働審判はこのようなやり取りで終わり、具体的な和解案等は次回への持ち越しとなった。
妻が帰ってきてから色々と話を聞き、弁護士にも電話で話を聞いた。
高笑いしたいくらいに良い気分だった。
第2回の労働審判では、不当解雇が認められ、具体的な金銭の話となった。
会社側の最初の提案は給料の3か月分だ。笑える笑える。
退職時に3か月分を俺らは要求したんだ。それを拒否して1か月分以上は出せないと言い続けた会社が、最初にいきなり「3か月分で勘弁してくれ」という姿勢を見せてきたのだ。
完全勝利と言える瞬間だった。
しかしこちらの弁護士は黙っちゃいない。成功報酬というものもあるわけで、全力で取りに行く。相手が降伏姿勢なのは間違いなく、あとは何も出なくなるまで叩くのみ。
話にならないし、こっちにはまだまだ出せる証拠があると言ってこの日は終了した。
第3回まではまた期間が空いたが、それまでの間に会社側弁護士から100万円程度で和解して欲しいという話があったそうだ。全く話にならないと突っぱねたと言っていた。
俺としてはスタート段階でいきなり会社側が3か月分と言ってきたことで完全勝利に酔いしれた。金額というよりも妻の敵を取りたいという気持ちが強かったため、この時点で大満足なのだ。
しかし弁護士はもちろん仕事だ。
取れるだけ取ろうとするのは当然のこと。
1か月分しか出さないと言っていた会社だ。ケチ極まりない。金額が大きくなればなるほど与えられるダメージも大きくなるはずだ。
ここから先はプロに任せようと思った。
俺も弁護士もやることをやったわけだが、一番頑張ったのは妻だ。
俺のように好戦的でもなければ・・・いや俺とは好戦的になることもあるが、他人とは好戦的でもなければ表舞台に立ちたいタイプでもない妻が裁判所で多くの人を相手に口頭弁論をしたのだ。
本当によく頑張ったと思う。
俺も頑張らねばならない。
「機を伺っている」じゃないんだよ。
少しずつでもいい。やれば取れるんだ。俺は大きく取れるトレーダーではないが、安定して利益を出せるトレーダーだ。どんな相場でも薄利ならば勝てる力を持っているはずだ。
妻の頑張りを見て俺も頑張ろうと決意した。