楽しい新婚旅行を終え、日常に戻っていった。塾の生徒は2人増えたことで赤字になる可能性は低くなったが、依然として経営が苦しい状況だった。
弟の株成績も2月以降は目立ったものではなかったはずだ。
しかし新婚旅行後の4月後半、激動する。
前回のお話はこちらです。
第16話 新婚旅行と労働審判
2012年は完全に株から撤退していたものの、2013年に入り、弟から勧められた株であっさりと50万円取ることが出来た。プライドなんかより金が大事だ。俺はプライドなんていらない。 この50万円は本当に生 ...
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弟の快進撃にデイトレ復帰を決断
1月に2000万円を手にした弟だったが、それ以降は少しずつ負けていたようだ。
しかし4月も後半になった頃、久しぶりにまた株への復帰を勧めてきた。
D「こんなチャンス二度とないから兄ちゃんもやった方がいいよ」
俺「今いくらになったの?」
D「4000万くらいかな」
うおぉぉ・・・4000万・・・だと?
1月に2000万・・・そしてその後負けていたのでは。
俺「どうやったんだ!?」
D「4月になって新興市場が暴騰してるから何やっても勝てる感じ」
そう言われて株ツールを起動してみると確かに何を買っても上がっている感じだった。
2年前、俺は生意気にもデイトレを教えている人がいた。一般的に言う弟子のような存在だ。
その弟子にメールをしてみた。
すると、この4月だけで資金が数倍になったとのこと。
・・・・・・
この弟子はお世辞にも上手いとは言えなかった。
もちろん弟だって覚醒したとは言え、それまでは負け続きだった言わばヘタクソだ。
そんな2人が揃って資金が何倍にもなった。
なるほど、なるほどなるほど。確かに何やっても勝てる相場だ。誰でも勝てる相場だ。
今戻らずにいつ戻るんだ。
安いプライド、金にならないプライドなど捨ててしまえばいい。
弟が手にした4000万円という金額は勝負出来る金額ではない。とても争える額ではない。
ならば長い物に巻かれてしまった方がはるかに楽に生きられるはずだ。
ゴールデンウィークに弟や友達とB級グルメに行き、そこで株について色々と聞いた。
そこで話していると、妻もデイトレに興味を持った。いや、持ってしまったと言うべきか。
マルチモニターを使って大量監視をすることや、無料メルマガ情報の話なども聞いた。
俺は形から入るのがすごい嫌いなタイプだ。だから結果も出ていないうちからテレビで見るデイトレーダーのようにモニターを並べてトレードするのは嫌だったのだ。
でも弟は絶対にそうするべきと言ってくる。
もう一度冷静に考えた。
確かに形から入るのは嫌だ。しかしそれ以上に考えているのは初期投資額ではないか。
パソコンを買い、モニターを買う。妻もやるならもう一台パソコンが必要になる。
すると10万円前後の出費になることが予想された。
俺は形から入るのが嫌だという言い訳をしながら、この10万円の出費を嫌っているように思えた。
よく思い出せ。今年に入り弟のおかげで50万円勝ったのだろう。新婚旅行の直前に聞いた銘柄は派手に上がることはなかったものの、少しの利益は確定することが出来た。
そしてその利益をもたらしてくれた弟は今や4000万円の資産を築いたトレーダー。
そんな弟が絶対に買えと言っているのだから買うべきなんじゃないか。
妻と話し、一式を揃えることにした。やれることはいきなり全てやろう。その上で勝てなければまたやめればいいんだ。余力を残しながら戦うのではなく、いきなり全力だ。
俺の復帰戦ではモニターが届かず、環境は間に合わなかったが、4万円勝ちで復帰戦を飾った。
その後はゴールデンウィークを使い、妻と2人で環境を整えた。
弟がチャットを使い、色々と教えてくれるという。
もちろん兄として悔しい思いがないわけではない。だがやはり4000万円は文字通り桁が違う。億り人にも近付いているわけだ。
ゴールデンウィーク明け、妻と一緒に9時前にスタンバイした。
弟は9時過ぎになると、自分がいけると思う銘柄をいくつか教えてくれた。しかし下げ相場で戦ってきた、下げ相場で慣れてきた俺からすると買いにくい銘柄ばかりだった。
妻は言う通りに動いて利益を出せていたようだ。
俺だけ置いていかれた。
リスクがあると思うから手が動かなかった。でも、誰でも勝てる相場なんだと言い聞かせ、目をつむり、えい!やー!と弟の推奨した銘柄に買いを入れてみる。
するとすぐに上がり出す。
なぜだ・・・。俺の経験上、もう上がらないだろうと思う銘柄も平然と上がる。
それだけじゃない。俺がいけると思う銘柄も上がる。
ふと見渡すと何でも上がっているように見えるほど多くの銘柄が上がっていた。
しかし10時過ぎには全体的な暴落場面も見た。
危ない橋であることも間違いなさそうに見えた。
この週は2勝2敗で終え、利益も大して残らなかった。
弟は資産を激しく上下させていたが、そこそこ勝っているようだった。
それに比べて俺の勝ち額、負け額は弟の使っている手数料にさえ遠く及ばない。
この状況がわかってもらえるだろうか。
兄が2万、3万の損益でハァハァ息を切らせている時に、弟は10万以上の手数料を支払いながら涼しい顔で数百万のギャンブルをする。
これぞまさに器の違い・・・。
でも俺は結婚したんだ。
弟に大きく遅れを取っていてもいい。そんなのはどうでもいいんだ。
弟の手数料以下で一喜一憂したっていい。それでも金を稼げればそれでいい。
それでいい、それでいい。そう言い聞かせていた。それも立派な努力だ。
その努力は翌週、すぐに呼応することになる。