株で億り人、億トレーダーになった弟を持つ男の思いを書いています。

億り人
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小説本編 第41話~50話

第43話 デイトレーダー兄弟の会話

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ポジティブモンスターからネガティブモンスターに変わった弟だったが、まだ不完全なネガティブモンスターだった。兄弟の会話の中でも、時に自信が垣間見えるところがあった。

この先、弟はどんなトレーダーになっていきたいのだろうか。

前回のお話はこちらです。

第42話 ポジティブモンスターからネガティブモンスターへ

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タラレバは負け組の象徴

授業中であり、生徒たちには本当に申し訳ないのだが、問題を出し、答え合わせをする以外の時間は弟とのチャットに集中していた。今日だけだから・・・大切な弟の大ピンチなんだ。

そんなことは生徒たちに関係ないのだが、心の中でずっとお願いしていた。

会話が続いていく中で、兄ちゃんに弟子入りするとか、勝てる気がしないとか言う割に意地やプライドのようなものが言葉の節々にあるのが気になっていた。

弟は億から陥落した際や、負けが続き負の連鎖に陥った時など、ブログによく書いていたことがある。

それは『少額、小ロットでコツコツやれば絶対に勝てる』ということだ。

しかも楽勝というように書いていたはずだ。

この会話の中にも出てきた。

D「〇〇さえしなければ楽勝なんだけどな」

「余計なことしなければ負けるはずないんだけど」

「1日数万でいいなら勝ち続ける自信はあるんだけど」

「イナゴトレードに徹した時はほぼ全勝出来てるんだけど」

俺はこの手の言い訳が大嫌いだ。

多くの負け組トレーダーが口にする自分擁護の言い訳に過ぎないからだ。

〇〇さえしなければ、と言うが、〇〇したのが自分であり、この先もそれをする性格なのだ。だから今後もその〇〇をするだろう。〇〇をしなくなることはきっとない。

もっと深い反省を伴わない限りね。

それに〇〇さえしなく、余計なことをしなければ勝てるというのはハッキリ言って全員に言えることだろう。どんなに超ド下手で負け続けているトレーダーも勝つ時はあるはずだ。

ならばそのド下手でも失敗トレードさえなくせば勝てる。

〇〇をしてしまい、ついつい飛び付いてしまうトレードをし、欲張って利益を伸ばそうとし、損を嫌ってロスカットをしない。それが人間なんだ。皆同じさ。

〇〇さえしなければ、と言っているうちはそう簡単に変われない。

〇〇してしまう自分を受け入れ、理解し、その上で打開策を練るのだ。

 

俺は必死に諭した。

俺「1日勝っても2万までとか制限つけたらどうだろう。欲を捨てるきっかけになるよ」

D「いやぁ、勝ちを制限する意味なんてないと思うなぁ」

俺「少ロットなら勝ち続けられる自信あるなら、実際それやってみなよ」

D「やってみようとして、実際やると勝てるんだけどすぐ欲張って変わっちゃうんだよね」

俺「1日数万だって勝ち続けるってことはそんな簡単なことじゃないんだぞ」

D「欲さえ出さなければいけると思うんだよね」

 

待て。全くネガティブモンスターじゃねぇぞ。

確かにポジティブモンスターではなくなった・・・ん?いやポジティブモンスターじゃねぇか?

この会話で何が嫌だって俺のこと気付かないうちにディスっているように思えるんだ。

俺がずっとやってきたのは1日数万を狙ったコツコツトレードだ。スランプに陥った時は1日に勝ち額を制限することで自分の欲を抑える練習もした。

別に弟に俺のやり方を真似して欲しいと思っているわけではない。

ただ、『1日に数万なら勝ち続けることが出来る』と甘い考えを持っていることが嫌だった。まるで俺のやり方であればいつでも出来るけどあえてしないと言われているように感じたからだ。

かなり前からこの言葉を聞いていた。

弟のトレードの仕方、狙いを『大』と言うならば俺の狙いは『小』だろう。

しかしデイトレに関して言えば『大は小を兼ねる』なんて当てはまらないんだ。

だから億り人に2回なったからと言って俺のやり方をあっさりマスターすることなんて出来るはずもない。いや、マスターどころか何もせずとも俺のやり方なら出来るというような言い方だ。

 

弟は決して悪気があるわけじゃない。わかる。

そもそも落ち込んで俺に話し掛けてきているくらいだしね。

ただ悪気がないからこそ厄介なわけで、この会話で俺は自然と傷付いているわけだ。

それでも俺はこうして悪気なくもグサグサ俺の心を刺してくる弟に一生懸命提案をしていた。

そしてその全ての提案は却下されていったんだ。

虚しいぜ・・・。授業を犠牲にしてまで話してるのによ。

でも本来トレーダーという職業自体が自由業であり、何かに縛られるものでもない。

ならば誰かにああしろ、こうしろ言われたとしても、自分が納得しないままそれをやってもうまくなどいかないだろう。仮にうまくいったとしても一時的でしかないはずだ。

この会話の中で、俺がいいと思い、なおかつ弟が納得する言葉を探さなければいけなかった。

勉強なんかよりはるかに難しい問題だ。

負けて自信を失っているのも確かだ。しかしそれでも小ロットなら勝ち続けるのは簡単だというプライドなのかポジティブさなのか、それも持っている。

その両方を満たす言葉とは、方法とは何なのか。

俺は弟になんて言えばいいのだろうか。

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